???
「伊織さん、お紅茶のおかわりはいかがです?」
伊織
「あ、ああ……い、いただく、いただきます……」
このお茶会の主催者である千住院明日香先輩が語り掛けてきた。
素の状態で答えようとしたところを、あやうく持ち直して敬語に切り替える。
明日香
「もしかして緊張なさっておいでかしら」
伊織
「ええまあ……」
この人は学内の私設学生団体『友愛会』の会長にして、『薔薇園の女帝』とまで称えられている有名人だ。
入会には厳しい選定があるらしく、この学園に通う学生の大多数が構成員になることを憧れている。そんなやや秘密めいた団体である。
その会長である明日香先輩は学園内でも有数の名家の出身ということもあって、別格の扱いをうけている。
生まれついての名家だけがもつ優雅な雰囲気。上流階級出身特有のカリスマに圧倒されて、俺は緊張を抑えられなかった。
ほんのちょっとした所作からもにじみ出る高貴なオーラは、流石は女帝と呼ばれるだけのことはある。